Q.所定労働時間を延ばすことは可能ですか?
ある事業所から、「所定労働時間を延ばしたい」というご相談がありました。
始業時刻:午前9時
終業時刻:午後5時
休憩時間:1時間
休 日:週休2日
その事業所の就業規則は上記のとおり1日の所定労働時間を7時間と定めていましたが、実際には、午後5時以降も日常的に残業が行われていながら残業手当を支払わず、実質サービス残業となっているのが常態でした。
そのため、これではまずい!と思った事業主が、所定労働時間を午後6時までにすれば、
1.実質労働条件は今までと変わらないからいいだろう
2.今の1週間の所定労働時間が35時間なので、延長しても法定労働時間の40時間に収まるから問題無いだろう
というわけです。
そもそも労働契約法で、「使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない。」とあります。
では、この場合はどうなのでしょう!?
労働者が合意しているならともかく、一方的に所定労働時間を延ばしていいものでしょうか。
一方的な変更でも、”合理的”と判断されれば認められます。
合理性の判断要素は、次の4つです。
1.労働者の受ける不利益の程度
2.労働条件の変更の必要性
3.変更後の就業規則の内容の相当性
4.労働組合等との交渉の状況
合理的であるか否かを判断するのは、労働基準監督署ではありません。
最終的には裁判所が判断します。
賃金、退職金の不利益変更についてはなかなか認められませんが、労働時間に関しては不利益の程度が低いとされる傾向があります。
それでも、不利益に変更する場合は、必要性や経営者として回避する努力をしたかどうかをよく説明して、従業員の理解を得ることが必要なのです。
また、就業規則の変更をする場合は、労働者に変更後の就業規則を周知させることも必要です。